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最高裁判所第三小法廷 昭和50年(行ツ)32号 判決

山口県下関市彦島後山町八六〇番地

上告人

有限会社 森田商店

右代表者代表取締役

森田良博

右訴訟代理人弁護士

西田信義

山口県下関市山ノ口町一番一八号

被上告人

下関税務署長

斉藤芳一

右指定代理人

児玉一雄

右当事者間の広島高等裁判所昭和四六年(行コ)第一〇号更正処分取消等請求事件について、同裁判所が昭和四九年一二月九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人西田信義の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 天野武一 裁判官 服部高顯 裁判官 環昌一)

(昭和五〇年(行ツ)第三二号 上告人 有限会社森田商店)

上告代理人西田信義の上告理由

第一 (原判決はその理由に齟齬がある)

原判決理由及びこれが第一審判決理由を引用するので、同判決理由九枚目裏四行目から一二行目までには、「本件事業年度においては全国的に特選米(一、二等米)の生産量が少ないため食糧事務所からの割当量が消費者の需要を満たしえない事情にあつたので‥‥実際の特選米の販売量はその記帳数量より多く、徳用米については実際の販売量より記帳数量が多くなつていることが認められ」と、同判決理由一二枚目裏五行目から一三枚目表二行目(原判決理由四枚目裏八行目から一二行目まで)によれば、「また、原告は、原告会社の係争事業年度の記帳売上数量が玄米の歩留り率九一%、その他の徳用米等のそれを一〇〇%として概算記帳されたものにすぎず‥‥原告会社において右比率を下廻るものとすべき特別の事情は認められず、他に右記帳売上数量を不当として斥けるべき事由はうかがわれないから、右主張は失当である」と、各記載されている。

この二つの理由の間に矛盾があり齟齬しているといわなければならない。即ち、右前段では普通米を特選米に格上げするためには右理由でも明記されている如く普通米(三、四等米)を十分精白しなければならないと認定している。つまり、そのためには食糧事務所及び同種法人で通常是認されている歩留り率九一%を下廻ることになり販売数量が当然減少するにも拘らず、右後段の理由によれば上告会社のみが他の同種法人が通常の歩留り率として用いている九一%に比べ特にこれより下廻るものを用いなければならない特別の事情がないと判断しているからである。

要するに、原判決は他の同種法人は前記の如き格上げをしていないにも拘らず上告会社のみ特選米に格上げ販売していることを前提としながら、そのための手段としての、精白度を増しより良い品質を作り上げるための歩留り率を考えず、これらが相関関係にあることを全く無視し、理解していないといわなければならない。

第二 (原判決は推計課税の方法等に誤りがあり、これは明らかに判決に影響を及ぼす法令違背がある)

一 推計課税のその一資料として、被上告人は、特選米、普通米の販売比率を算定するにあたり注文配達帳(甲第八号証)をもとに昭和四〇年度分について昭和四〇年九月から同年一一月までの間の現金、掛売の各特選米及び普通米の販売比率を基礎数値としている。

しかしながら、本件二係争事業年度につきその始め頃と終り頃の特選米の占める比率は順次増加しているから、右三ヶ月の期間は特選米比率が一番高いものをその資料としたことになるから、もとよりその点に関し合理性がない(甲第七号証、甲第五号証、甲第一一号証の一ないし一〇、乙第五号証の一〇ないし一五、上告人の昭和四七年四月一八日付準備書面別表第二参照)。

二 推計課税の一資料として、被上告人は、昭和四〇年度分につき特定月、特定日のみの特選米、普通米の比率を上告会社の営業日誌より抽出しているが、もとより全期間にわたつてこれをなすのが正確であり、より合理的な推計上の所得が算出できることはいうまでもないところである。これをなすことがさほど困難性があつたという特別の事情も考えられず、また、被上告人のなす推計課税の方法が複雑であり、且つ細かい数値を基礎としているのでなおさらその必要性があつた。

もとより、より正確、より合理性のある数値をこれが算定する以上原判決理由摘示は納得できない。

また、被上告人側でこの職務に当つた証人池永秋雄は、右営業日誌よりの特選米、普通米の選定に当り、上告会社代表者らの意見を聴取することなく単なる特選米、普通米の価額のみをもとにこの調査をなしたのであるから、掛売における米穀以外の各種商品の価額を考慮に入れていないので、前記被上告人の特選米の比率は信用性がない(乙第一一号証の一、二 甲第一〇号証、甲第一一号証の一ないし一〇、上告会社代表者の供述)。

第三 推計課税の基礎資料として前記第一記載の如く販売数量につき原判決は歩留り率を九一%となし、昭和四〇年度分の営業日誌及び雑記帳(甲第七号証)の数値を用いているが、これが特選米等に格上げするため精白度合との関連においてその数量が減少することは前述のとおりである。上告会社が一応の目安として棚卸数量に九一%を乗したものを記帳したにも拘らず、被上告人は、前記の事情を考慮することなくこれを用いたことは、誤りがあるといわなければならない。

第四 推計課税の方法として昭和三九年度分につき昭和四〇年度の差益率を基準に昭和三九年、昭和四〇年度分の各販売記帳額による差益率の低下割合を算定した上でこれをなしている。然るに昭和三九年度分の上告会社の売上金額を推計課税の方法で抽出するにあたり被上告人は、その基礎資料として上告会社の昭和三九年度分の記帳売上金額を用いていることは、それ自体に問題がある。

要するに、上告会社の記帳売上金額が問題視され事実の売上金額を合理的に算出すべき問題であるにも拘らず、記帳売上金額をその資料として用いることは明らかに自己矛盾がある。

以上の如く原判決はその理由に違法があるので、直ちに原判決を破棄されたい。

以上

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